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2024.03.31
NEIGHBORS
変わりゆく時代のなかで目まぐるしい変化を続ける京都の街並み。三条大橋のそばにたたずむ京人形屋「小刀屋忠兵衛」は、江戸時代から京都の変遷を見守ってきました。伝統を守りながら時代に愛されるお店を目指して、店主の大西さんは歴史を語り続けています。
「小刀屋忠兵衛」が扱う京人形は、京都市周辺で作られている伝統的な日本人形です。現在は雛人形や五月人形として親しまれています。
1番の特色はその製作工程。頭師・手足師・髪付師・小道具師・胴着付師などの職人が、分業で1体の人形を生み出します。仕上がりの精巧さは職人一人ひとりの熟練の技がなせる技。
今は京人形の老舗として愛される「小刀屋忠兵衛」ですが、明暦二年(1656)の創業当初は宿屋を営んでいました。江戸時代、京都三条は江戸の町から続く旅の終着地点。旅人で賑わう三条大橋付近には宿屋がひしめきあっていました。
「これは今からおよそ300年前のガイドブックの写しです。ここに“小刀屋”の文字があります。」店主の大西さんが広げてくれたのは、貴重な歴史資料。現物は博物館や図書館にしかないそう。資料には旅人で賑わう三条大橋と宿屋が描かれていました。
当時より町内で役員を努める家であったことから、大西さんの手元には歴史資料が数多く残っています。
明治に入ると京都駅が誕生し、京都の玄関口はそちらへ移りました。町の変化とニーズに合わせ、「小刀屋忠兵衛」も呉服を扱う商店へと姿を変えました。
明治16年発行の書籍『都の魁(さきがけ)』には当時の商店がずらり。呉服屋のページには「大西忠兵衛」の名前が。店の倉庫には今も呉服屋時代の看板が残されていると大西さんは話します。
時は流れ戦後。旅行が一番の娯楽だったこの時代には、京都河原町も旅行客で華やぎました。小刀屋忠兵衛も土産物を扱うようになり、それが発展して今の京人形屋になったのだとか。
時代がどれだけ変わっても、小刀屋忠兵衛が変わらず愛され続ける理由は、時代のニーズを捉えてきたからです。
京人形の職人は年々減少しており、新たな職人を見つけることは簡単ではありません。京人形屋としてあり続けるため、3月と5月の節句人形だけでなくバラエティ豊かな作品を取り扱っています。観光客に喜ばれる小ぶりな土産物や、山鉾・神輿をはじめとする祇園祭に関連した作品が店内にずらりと並びます。
“商い=飽きない”。大西さんが大切にしている言葉です。京都の伝統を重んじる心は変えず、その時代に合った商いにアレンジする。お客様を飽きさせないために変化することで、小刀屋忠兵衛は商いを続けてきました。
大西さんはお客様に対して「商品を買わなくても、見るだけでかまいません。」と笑顔で話します。近年は若い女性が立ち寄り、じっくりと人形を見ていくことも多いのだとか。
京都の歴史や文化をとことん味わってほしい想いから、貴重な歴史資料はすべて展示し、興味を示したお客様には京都やお店の歴史について説明します。
「京都の街は変わり続けている。ほかの場所では見られない資料がせっかくあるのだから、私がお見せしないと宝の持ち腐れでしょう。興味をもってくれた方に歴史を伝える、それが小刀屋忠兵衛の役目です。」と話してくれました。
変わり続ける京都河原町。親しまれるお店であり続けるため、京都で作られたものを取り扱うことにこだわり続けると大西さんは力強く語ります。見た目の京都らしさだけでなく、京都に根付く文化や伝統を「小刀屋忠兵衛」で味わってみてはいかがでしょうか。
小刀屋忠兵衛
電話:075-221-6349
住所:京都府京都市中京区中島町87
アクセス:三条京阪駅より徒歩3分
*営業時間や定休日についての詳細は、上記のリンク先にてご確認ください。