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2025.02.05

「LR Tacos&Local dishes」タコスに包まれた函館の地域課題とは

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「LR Tacos&Local dishes」タコスに包まれた函館の地域課題とは

函館のお魚といえばイカを想像する方が多いかもしれません。市内にはイカのモニュメントが溢れ、市民はイカ踊りを踊り、ご当地キャラクターも誕生するなど、イカは函館市のブランディングに一役買ってきました。しかし近年、函館周辺の海洋資源の分布が変わり、市場からイカが姿を消し、その代わりにブリやイワシといった魚が目立つようになっているのです。

“獲れる魚の種類が変わった”、“サイズが小さくて市場では値段がつかない”といった漁業の悩み以外にも、未利用食材や取れすぎた食材の新たな活用方法を考えたいという悩みも…。そんな函館に存在する課題を解決するお店が、地域課題解決型実店舗「LR Tacos&Local dishes」です。

「LR Tacos&Local dishes」は2023年7月にオープン。ベイエリアとして有名な末広町の裏路地に位置し、1909(明治42)年に建てられた函館の伝統的建造物にも指定される建物の1階にあります。

店舗入り口右にあるカウンタースペース

店舗入り口右にあるカウンタースペース

お店が掲げる“地域課題解決型実店舗”とは

今回お話を伺ったのは、お店を運営する「Local Revolution(ローカルレボリューション)」代表の岡本啓吾(おかもと・けいご)さん。「Local Revolution」は、社会的に価値が見出されていない地域(ローカル)資源を活用し、食と人の力で地域に愛ある仕組みの改革(レボリューション)を起こすことを目標に、2022年に結成。岡本さんは五稜郭エリアにある商業施設「シエスタハコダテ」で勤務する中で知り合った方々の声から、函館が抱える食の問題を知ったと言います。

取れすぎるマイワシはアンチョビやソース、ナンプラーに加工、道南だけでも年間550トンは排出・廃棄されるというおからやバター製造による副産物の脱脂粉乳はお菓子に活用しています。現在では未利用食材であるムール貝の活用を目指したプロジェクトも進められています。

「Local Revolution」では様々なプロジェクトを通じて課題解決を行ってきましたが、「もっとたくさんの方に楽しみながら食の課題について考えていただきたい」との想いから、“地域課題をトルティーヤで包む”をキャッチコピーとした地域課題解決型実店舗「LR Tacos&Local dishes」が誕生しました。

オリジナルのトルティーヤに使われた、意外な材料

タコスとは小麦粉やトウモロコシを主原料としたトルティーヤで、具材を包んだメキシコ料理です。お店で提供するタコスには、未利用食品として長年問題視されてきたおからと脱脂粉乳をメイン材料としたオリジナルのトルティーヤを使用。「Local Revolution」の副代表で、隣町・北斗市のレストランでシェフを務める斎藤亘胤(さいとう・のぶつぐ)さんが開発しました。

このオリジナルのトルティーヤはおからと脱脂粉乳のアップサイクルという観点だけでなく、いずれの材料もタンパク質が豊富で、かつ、おからの持つ豊富な食物繊維が摂取できるという利点もありました。つなぎに少量の小麦粉をプラスしたことで、香りや味はもちろん、歯切れや食感もよく、一般的なトルティーヤと比べても遜色ない美味しいものが出来上がったそうです。

メキシコ生まれのタコスに函館のエッセンスを

「ベジタブル」(左)と「ミート」(右)のタコス

「ベジタブル」(左)と「ミート」(右)のタコス

お店で提供されているタコスは、「ミート」「フィッシュ」「ベジタブル」の3種類。地物野菜を活用しながら、メイン食材には地域の課題を解決するべく考えられたものが選ばれており、こちらも全て斎藤さんが開発したオリジナルの味です。

「ミート」には道内で増えて食害や事故などで問題に上がる鹿肉を選定。市内の加工業者の協力により処理された新鮮なお肉を使ってメキシコの煮込み料理であるカルニタスに。

ヴィーガンの方も楽しむことができる「ベジタブル」には、おからと大豆、地物のニラを使い、中東のコロッケ“ファラフェル”と本場のピタサンドをタコスにアレンジ。

「フィッシュ」のタコス

「フィッシュ」のタコス

「フィッシュ」には未利用魚や最近函館で水揚げされるようになった小〜中型の鯖をサクッとふわっと感が楽しめるフリットにし、アメリカ・サンディエゴなどで食されるフィッシュタコスをイメージしたメニューへ活用。

おから、脱脂粉乳、メイン具材が持つ課題、そして地元野菜の活用…この手のひらサイズのタコス1個の中にもたくさんの食の課題が詰まっていることに驚くことでしょう。「お客様に、実際に店舗にお越しいただいて食事してもらうことで、『私たちの地域でもこんな食の問題があるんだ』『未利用食品ってこんなに美味しくオシャレにいただけるんだ』と、背景も含めて理解していただくきっかけになればいいですね。」と、岡本さんは話します。

「LR」が持つ力

「LR Tacos&Local dishes」開店にあたって協力した仲間たちとの集合写真

「LR Tacos&Local dishes」開店にあたって協力した仲間たちとの集合写真

岡本さんは「元々、函館のことがあまり好きではなかったんですよね。」と、少しためらいながら口を開きました。実際に函館を出て外から函館を見た時に、この街が持つ魅力に気付いたと言います。「若い頃は、函館は陸の孤島で都会に出るにも時間がかかり、つまらない場所だと思っていました。でも、本当はそうではなく、函館にも熱い想いを持つ方々が沢山いらっしゃって、豊かなで美しい景観や豊富な食材がありました。仕事を通じて様々な人たちにお会いしてお話ししていく中で、『函館をなんとか盛り上げたい』という気持ちが生まれたんです。」

地域の人たちの愛に溢れた函館の改革、それがLR=「Local Revolution」なのです。岡本さんのお話を思い出しながらタコスを手に取ると、関係してきたたくさんの方々の愛と希望に満ちた温かい気持ちが感じられました。食を通じて地元の方々の想いを知り、交流していくことで、ワクワクする函館の旅のヒントが得られるかもしれません。


LR Tacos&Local dishes
住所:北海道函館市末広町14-4
アクセス:函館市電「十字街」徒歩6分
SNS:https://www.instagram.com/lrtacos/
*営業時間や定休日についての詳細は、上記のリンク先にてご確認ください